(1)増殖硝子体網膜症、増殖糖尿病網膜症にともなう増殖組織からRNAを抽出し、逆転写後にcRNAを作成し、イルミナマイクロアレイにハイブリダイズした。対照コントロールとしてヒト網膜RNAを用いた。網膜と増殖組織間で優位に発現レベルの異なる遺伝子群が約300遺伝子抽出できた。この中には網膜でほとんど発現が認められず、増殖組織で優位に発現が上昇している遺伝子が含まれ、治療の分子標的になる可能性があると考えられた。 (2)患者の硝子体中の血管新生関連因子をMultiplex ELISA法で測定し、硝子体手術前後で比較したところ、Anigopietin-2や血管内皮増殖因子などの血管新生促進因子がTIMP-2などの血管新生抑制因子に比べて急速に減少しており、硝子体手術の奏功機序を部分的に説明しうると考えられた。 (3)網膜虚血モデルマウス網膜の包括的遺伝子発現解析をマイクロアレイを用いて行った。虚血網膜において発現が有意に変動する遺伝子群を抽出することに成功し、遺伝子群は、Gene ontology databaseを用いて、成長因子、炎症、アポトーシス、解糖系などの機能単位に分類することができた。これらの結果は、Realtime RT-PCRやMultiplex ELISA法を用いて再現性を確認することができた。本研究において、虚血網膜における遺伝子発現の変動を包括的に理解するとができた。虚血網膜で最も発現が大きく変動した遺伝子であるMip-1βについて同モデルマウス網膜での発現、局在、機能について検討したところ、Mip-1βが虚血網膜内層に発現し、網膜の病的血管新生より生理的血管新生により強く関与していることを初めて明らかにした。
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