ドライアイの病態解析や新しい治療法の開発のために、涙液成分、特に蛋白成分や脂質成分の詳細な分析を行った。本研究ではミクロ液体クロマトグラフィ(HPLC)とエレクトロンスプレー-質量分析計(ESI-MS)を用いた分析法によって、1枚の濾紙で採取した涙液試料から蛋白と脂質の網羅的解析を行う方法を試みた。HPLCとESI-MSをオンラインで接続した分析法では1つの試料から数百種類以上の成分を同定、定量することが可能であり、しかも高感度であるために、涙液のような微量検体の分析に適している。 蛋白に関する涙液分析を行った結果では、正常者、シェーグレン症候群ともに100以上の蛋白を同定することができ、Mascotソフトウエアのスコアで順位付けができた。シェーグレン症候群で正常者よりスコアが高い蛋白として補体C3とgelsolinが、スコアが低い蛋白としてlipocalin、prolactin-induced protein、zinc-alpha2-glycoproteinをスクリーニングすることができた。このうち、補体C3と関連蛋白であるC4についてはEIAを用いて、涙液中の濃度を測定し、シェーグレン症候群で有意に高値を示すことを確認した。脂質分析ではリン脂質に注目した分析を行い、シェーグレン症候群においてレシチンの16:0、18:1や18:0、18:2が減少していることが示唆された。今後、症例数を増やして解析を進めることで、疾患のバイオマーカーに成りうるかどうか検討していく予定である。
|