研究課題
抗緑内障治療薬の血管拡張作用を薬理学的に検討するために、ウサギ、ラットおよびマウス摘出毛様動脈に対するプロスタグランディン製剤(PG製剤)の効果を検討した。顕微鏡下で摘出眼球より毛様動脈を分離し、myographシステムに装着し、ウサギ、ラットにおいては当尺性収縮記録法によって、種々の薬物の効果を検討した。また、マウスでは同じ薬物の血管細胞内のCa濃度に及ぼす影響をFluorophotometryをもちいて検討した。臨床で使用されているPG製剤であるタフルプロスト、トラバプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロストは高カリウム溶液で収縮させたウサギ毛様動脈を濃度依存性に弛緩させた。しかしPGF2α自体による弛緩効果はほとんど認められなかった。プロスタグランデン受容体ノックアウトマウスを用いて、これらの薬剤の血管弛緩機序をさらに詳しく検討し、FP、EP受容体KOマウスにおいてもこれらのPG製剤が弛緩作用を持つことを見いだした。従ってPG製剤による血管弛緩がこれらの受容体を介さない作用機序を持っていると考えられた。多くの抗緑内障がウサギ毛様動脈に対して弛緩効果を持っており、これがin vivoでこれらの薬剤が眼循環に効果を持つ説明になると思われた。緑内障のrisk factorの最も重要なものは眼圧であるが、正常眼圧緑内障のような症例には眼循環も重要な要素と思われる。抗緑内用薬の眼循環に対する効果の研究はこの意味から臨床上も重要である。
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