高付着能を利用した幹細胞単離法により扁平上皮である結膜上皮幹細胞の単離が可能であるかを明らかにすることを目的とした検討を行った。ヒト研究用輸入角膜より球結膜組織を採取し、細胞を単一細胞まで分散させた。分散した細胞を60mm non-tissue culture dishに1000cells/cm^2の濃度で播種し、翌日培地上清とともに浮遊細胞を除去しPBS(-)と培地を用いて洗浄した後、DMEM/F12基礎培地にB27 supplementを添加した無血清培地で一週間培養後、発生したコロニーを用いて、増殖能や発現蛋白質、組織構築能、分化能を評価した。結膜組織もnon-tissue culture dish上で付着増殖する細胞が存在することを確認した。この細胞はEGF存在下一週間ほどで円形のコロニーを形成し、重層化も進んだ。結膜上皮特異的ケラチンパターンであるCK4-CK13に陽性であり、結膜上皮細胞と確認できた。また、コロニーをEDTA/PBS(-)中でピペッティングにより剥離し、Corning Transwellに移し変え培養することで、直径10mmほどの結膜シートが得られた。また高付着能細胞をbFGF存在下で培養するとPAS染色陽性でムチンを産生していると考えられる杯細胞へ分化した。高付着能を利用した幹細胞単離法により、ヒト結膜から、組織形成能があり結膜上皮細胞と杯細胞へ分化する結膜上皮幹・前駆細胞の単離が可能であった。このことから我々の開発した上皮系幹細胞採取法により、ヒト結膜上皮の幹・前駆細胞が増殖因子の影響下に上皮系細胞と杯細胞という全く異なった細胞に分化誘導可能であることが明らかとなった。
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