研究概要 |
ヒト角膜内皮細胞は、レトロウイルス使用の培養HCE細胞株(cell lines)を作成した。この培養HCEを利用して、インフォームドコンセントで同意の得られた健常人、角膜内皮炎、ぶどう膜炎患者の末梢血からCD4^+、CD8^+、pan-T細胞を採取し、標的細胞として使用した。この細胞をanti-human CD3 antibodyおよびanti-human CD28 antibodyを用いて活性化T細胞として使用した。In vitroのHCE細胞抑制の評価を行う目的で、サイミジン取り込み試験とflow cytometryを用いたCFSE取り込み試験、活性化T細胞の産生するサイトカイン測定(IFNγ,IL-2,IL-6,IL-4,IL-10,TNF-α)にて検討した。その結果、培養HCEはin vitroでCD4^+、CD8^+、pan-T細胞いずれも有意に細胞増殖を抑制していた。また、活性化T細胞産生サイトカイン測定では、特に炎症性サイトカインのIFNγの産生抑制が強く認められていた。その抑制が細胞接触かどうかを確認するために、cell insert transwell membraneおよびHCE細胞培養上清を用いて抑制実験を行ったところ、このHCE細胞は細胞接触のみで活性化T細胞抑制を行っていた。またB細胞、マクロファージ(単球)の活性化抑制も見られた。その責任分子はPD-L1副刺激分子で、この細胞表面分子を介してPD-1陽性Th1細胞を特異的に抑制していた(Sugita S, et al.Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2009 ; 50 : 263-272)。我々は、このHCEが制御性T細胞誘導能を有するかも検討した。その結果、培養HCEはCD8^+ T細胞をin vitroで制御性T細胞へと変換し、その責任分子は膜結合型TGF-betaであることを見出した(Sugita S, et al.Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2010, in press)。
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