研究課題
我々は、眼科領域における難治性網膜疾患の1つである網膜色素変性(RP)の治療法開発に向けて、RPの中型動物モデルであるロドプシンP347Lトランスジェニック(Tg)ラビットの作成に世界で初めて成功した(Kondo et al.IOVS, 2009)。今年度は、このTgラビットの網膜を組織学的、および電気生理学的に調べ、その視細胞の変性過程と網膜内層の二次的機能変化を研究した。組織学的検査によって、視細胞の変性は網膜中心部(visual streak)で最も強く、周辺部では変性が比較的軽いことがわかった。これは、ロドプシンの発現の部位的な差によるものであると考えられた。また電子顕微鏡による観察により、Tgラビットの視細胞間には多量の小胞(vesicle)が沈着しており、この中に含まれる異常なロドプシンが視細胞死に関与していることがわかった。電気生理学的検査では、このTgラビットの網膜電図(ERG)は、週齢とともに全ての成分が徐々に減弱し、b波よりもa波の方がより障害されており、律動様小波(OPs)が全ての成分の中で最も保たれていることがわかった。興味深いことに、若いTgウサギのOPsは同じ週齢の野生型ウサギよりも有意に大きかった。薬理学的な実験により、若いTgウサギにみられるこの大きなOPsは、網膜内層の二次的機能変化に起因していることが示唆された(Sakai et al. IOVS, 2009)。以上の結果により、我々の作成したTgラビットは、網膜外層(視細胞)が徐々に変性するとともに網膜内層は二次的な機能変化をおこすという、ヒトのRPに非常によく似た網膜変性様式を示すことがわかった。
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