研究概要 |
1.単純ヘルペスウイルス(HSV)の角膜内皮への感染は、内皮型ヘルペスの発症を引き起こすが、その病態には不明な点が多い。そこで昨年より引き続いて、ヒト角膜内皮のHSV感染に対する分子応答を包括的にとらえるためにマイクロアレイを用いた検索をおこなった。方法としては不死化ヒト角膜内皮細胞にHSV-1(KOS株)を感染させて作成したTranscriptomeネットワークを用い、種々の統計解析をおこなうとともに、プロテインアレイによる確認も行った。その結果、HSV感染応答Transcriptomeのprimary associated functionが抗原呈示であることが判明した。また、プロテインアレイにおいても抗原呈示に関与する分子、すなわち、IL-6,IP-10,HVEML,IFN-γが上昇していた。そこで、ヒト角膜内皮の抗原呈示能を確かめるために、Mixed lymphocyte reaction assayを行ったところ、HSV-1を感染しMMC処理したヒト角膜内皮はHSV既感染者のアロのヒトT細胞を刺激してBrDUの取り込みを増加させた。このことから、少なくともHSV感染に関しては角膜内皮は抗原呈示細胞として機能することが示唆された。 2.マウスHSV角膜感染モデルを用いてhelicase-primase阻害作用をもつ新しい抗ウイルス薬点眼投与を行い、その有効性を涙液のHSV real-time PCR,上皮病変臨床スコア、眼球・三叉神経節のHSV力価測定にて調べた、その結果、感染後2日に樹枝状病変を確認してからの点眼開始で3mg/ml群ではその翌日、0.3mg/ml群ではその翌々日から有意に涙液中のHSV-DNAと上皮病変臨床スコアを抑制し、感染後7日目(治療後5日目)の眼球のウイルス力価を両群とも有意に抑制した。以上から、この抗ウイルス薬の点眼としての有効性が示された。
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