H20年度において正常マウス角膜上皮細胞を10継代以上安定して培養することに成功し、本方法においてマウス角膜上皮細胞がその特徴を維持していることの確認をおこなった。H21年度においてはさらに、角膜特異的分化マーカーであるケラチン12(K12)の発現(プロモーター)によりGFPを発現するK12-Cre-ZEGマウスより分離したマウス表皮細胞を用いて、角膜上皮様細胞への形質転換を試みた。その結果、GFPの発現はプラスチック上、羊膜上ではGFP陽性細胞は認められなかったものの、角膜実質上に播種した細胞でK12-Cre-ZEGマウス由来のGFPの発現が認められた。このことより、角膜実質-上皮間作用が重要である可能性が示された。 そこでH22年度では、角膜実質細胞の発現する増殖因子に着目し、増殖因子発現プロファイルの変化について検討を行った。 プラスチック上、またはコラーゲンゲル内で培養した皮膚線維芽細胞と角膜実質細胞は異なる増殖因子発現プロファイルを示したが、それぞれの細胞を培養しているコラーゲンゲル上で角膜上皮細胞を培養したところ、増殖因子の発現プロファイルは変化し、さらに角膜上皮細胞を正常角膜と同様に重層化させることにより角膜由来線維芽細胞と皮膚由来線維芽細胞が類似した増殖因子発現パターンを示すことが示された。 この結果は、線維芽細胞の遺伝子発現パターンに角膜実質-上皮間作用が関与している可能性を示しており、角膜実質細胞の増殖因子発現パターンが角膜上皮の特異性の維持に重要な働きをしている可能性を示唆するものである。
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