研究概要 |
1.網膜疾患における小胞体ストレスの関与並びにその細胞死の機序解明 実験的サル緑内障モデルを作製し、小胞体ストレスの関与について検討した。網膜・視神経から大脳視覚野への中継路である外側膝状体(LGN)においてポリユビキチン化蛋白質、eIF2αのリン酸化、CHOPの発現およびアポトーシス様細胞死の指標であるterminal deoxynucleotidyl transferase-mediated biotin-dUTP nick end labeling (TUNEL)陽性細胞が障害の早期から検出された。本研究成果は、緑内障の早期にLGNの変性が惹起され、その障害に小胞体ストレスが関与していることを示唆している。 2.小胞体ストレス細胞死を抑制する治療薬の探索 ラット由来培養網膜神経節細胞を用いてツニカマイシン誘発小胞体ストレス細胞死に対するスクリーニングを実施し、(2S)-1-(4-amino-2,3,5-trimethylphenoxy)-3-(4-[4-(4-fluorobenzyl)phenyl]-1-piperazinyl)-2-propanol dimethanesulfonate (SUN N8075)が強力にその細胞死を抑制することを見出した。さらに、SUN N8075の保護作用が網膜以外の細胞においても認められるか否か確認するために、ヒト由来神経芽細胞腫(SH-SY5Y)を用いて同様の検討を実施した。その結果、SUN N8075はSH-SY5Y細胞においても同様にツニカマイシンによる細胞死およびcaspase-3の活性化を抑制した。その作用機序についてDNAマイクロアレイを用いて解析を行い、いくつかの標的候補分子を同定した。 今後、この標的分子の機能を解明することにより小胞体ストレス細胞死の機序解明ならびに緑内障をはじめとする網膜疾患に対する新規神経保護薬の開発に繋がる可能性が期待される。
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