凍結保存角膜は、抗原性が低く生体への適合性がよいことが知られており、角膜再生医療に用いることができると考える。しかし臨床的には、角膜凍結保存角膜を用いた表層角膜移植では、新鮮角膜を用いた表層角膜移植術に比べて術後の角膜透明性の回復に時間がかかることが知られており、コラーゲン線維の配列を保ち角膜の透明性維持に重要な役割を果たすグリコサミノグリカンの変性を生じている可能性が指摘されている。本研究では、アルジネートを用いて凍結保存したウサギ角膜組織中に含まれるグルコサミノグリカン量を測定し、冷凍保存後のグルコサミノグリカン変性におけるアルジネートの効果を比較検討した。冷凍保存角膜より、透析法でケラタン硫酸を抽出し、ELISA定量を行った。アルジネートを用いないで冷凍保存した角膜と比較し、アルジネートを用いて保存した群では有意にケラタン硫酸濃度が高いことが分かった。同様に保存したウサギおよびヒト角膜のケラタン硫酸の蛍光免疫染色を行ったところ、アルジネートを用いて保存した群の角膜実質で強い染色が観察された。これより、アルジネートは角膜実質内にケラタン硫酸を保持し、グルコサミノグリカンの変性を防ぐ可能性が示唆された。また、クライオスタットを用いてカニクイザル角膜実質フィルムを作成し、カニクイザル培養角膜内皮シートを作成した。得られたシートを用いた免疫染色により、本シートは角膜内皮の機能に関連する蛋白(ZO-1、Na^+-K^+ ATPase)を発現していることがわかった。
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