研究課題
角膜実質フィルムを基質とした培養角膜内皮シートを作成し、ウサギ眼への移植を行って角膜内皮移植に準じる手技による角膜移植を試みた。1ヶ月間凍結保存した研究用ヒト角膜組織をマイクロケラトームを用いて層状に切開し、厚さ約150Fmのフィルムを作成した。継代培養した角膜内皮細胞を角膜実質コラーゲンフィルム上に播種して、培養角膜内皮細胞シートを作成した。培養角膜内皮シートは正常角膜内皮細胞に類似した密度約2000個/mm^2の多角形細胞からなり、これらの細胞は角膜内皮細胞の機能に関するNa^+-K^+-ATPaseおよびZO-1を発現していた。次に、角膜内皮細胞を周辺部まで機械的に掻爬したウサギ眼に、直径約8mmのヒト角膜実質コラーゲンフィルレムをキャリアとする培養角膜内皮シートを挿入し、前房内に空気を注入して角膜内皮シートをホスト角膜実質面に接着させた。移植後に角膜内皮シートはホスト角膜実質面中央に接着しており、ホスト-グラフト間の離開、グラフトの移動を認めなかった。移植24時間後の角膜の透明性は良好で、移植した培養角膜内皮細胞が生着し、生体内で機能することを確認した。本研究結果では、アルジネートコーティングの有無による角膜実質コラーゲンの保存状態には差が認められず、アルジネートの有用性を示す結果は得られなかったが、角膜実質フィルムを用いた培養角膜内皮シート移植の有用性を示す結果が得られた。さらに今年度は、アルジネートビーズを用いて角膜実質細胞を培養し、血清濃度、培地組成、酸素濃度などの培養条件の違いが細胞増殖に与える影響を検討した。
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日本眼科学会雑誌
巻: 114 ページ: 161-199