研究概要 |
肝芽腫のうち、予後の良い標準リスク群で治療を軽減できる腫瘍の層別を、高リスク群では有効な治療開発への分子標的探索に向けて、1998年からJPLT-2として治療プロトコールにて治療して中央病理診断された98例(生存69,死亡29)と、インフォームドコンセントを得て保存された18組の患者及び両親の体細胞検体を検討した。多型解析用アレイとゲノム型発現解析用アレイ等を用いて解析を行った結果、染色体1q,2p,7q,11q,21等に高頻度に異常を認め、さらに発現解析用アレイでは、これらの部位に存在する遺伝子の異常を検索し、標準リスク群と高リスク群の各々に特異的に上昇あるいは低下している遺伝子を24、17遺伝子抽出した。臨床病理分類、βカテニン異常と検討から、予後良好な胎児型は遺伝子発現から層別されたが、一部の予後不良な胎児型の発現とは異なっており、遺伝子解析は、生検標本での病理診断の限界を一部補足する意味で重要と考えられた。高リスク群特に死亡例の検討から肝内進展再発例11例と遠隔転移群18例で特異的な発現を示す遺伝子と特異的に変動するマイクロRNAを抽出した。その結果、肝内再発例は細胞周期関連遺伝子が、一方、遠隔転移例は細胞接着因子の変化が特異的であった。さらに、遺伝子変化、遺伝子発現による分子診断から、肝外進展として位置づけられている、門脈進展、肝静脈進展、肝外浸潤の因子にっいても検討を行っている。また、遺伝子発現にインプリント遺伝子の関与の可能性から、両親の多型を利用した解析を継続している。異常から、標準リスク肝芽腫のうち予後良好な胎児型を遺伝子解析から層別可能となった。また、予後不良例である高リスク群は、転移と局所再発が異なった遺伝子発現を示し、これらはここに分子標的を定めたオーダーメード療法が望まれ、さらに解析を行う必要があると考えられた。
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