研究課題
本研究はヒルシュスプルング病に対する神経堤幹細胞移植の可能性を検討することを目標に、3年間の研究期間内に下記の項目について明らかにする計画を立てた。(1)マウス消化管から神経堤幹細胞(NCSCs: Neural Crest Stem Cells)を分離、同定し、自己増殖能、多分化能を検証する。(2)(1)で得たNCSCsをヒルシュスプルング病モデル動物に移植し、その生着、分化を検証する。(3)ヒト消化管から同様にNCSCsの分離、同定を試みる。初年度である、平成20年度における成果をマウス、ヒトに分けて概説する。1.マウス:正常マウスおよびP0-Cre/floxP-CAT-CAG-EGFマウス胎児の腸管を用いて、分離した細胞を2週間培養したところ、細胞塊(sphere)の良好な形成を認めた。培養条件は、研究分担者である名越のプロトコールを用いた(Nagoshi et al.,2008)。得られたsphereが神経堤幹細胞のマーカーであるSox10, p75や、神経幹細胞マーカーであるNestin,Musashi1などを発現していることを免疫染色で確認し、また、神経、グリア、平滑筋の3系統に分化することを同様に免疫染色で確認している。さらに、sphereと正常マウス胎児腸管との共培養において、sphereから腸管内へ細胞が移動し、その一部が神経に分化したことを確認している。2.ヒト:平成20年度末までに臨床検体12例を用いて、ヒト腸管からのsphere形成を試み、5例でsphere形成を認めた。sphere形成を認めたのは、小児症例の筋層を用いた場合のみであり、成人症例や粘膜からの形成は、これまでのところ認められていない。これらのsphereはマウスと同様に、神経、グリア、平滑筋の3系統への分化が確認されている。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件)
Cell Stem Cell 10:2(4)
ページ: 392-403