研究概要 |
今回は羊の妊娠が成立したため、過去の実験に追加して、胎児期尿路閉塞モデルとシャム手術モデルを追加した。現在までの数が十分でなかった閉塞後24時間、3日,5日,7日,14日、145日(満期)の尿路閉塞モデルを安楽死させ、その早期の病理学的変化を検討した。今回は尿路閉塞モデル(28匹)、シャム手術(20匹)に対し手術を施行した。母羊を全身麻酔下に鎮静し、子宮を切開後胎生60日の尿路閉塞モデルを作成した。オスでは尿膜管と尿道を結紮、メスでは尿膜管と膀胱頸部を結紮した。今回はルーペとヘッドライトを使用したため生存率が向上した。その結果、尿路閉塞後早期の腎の変化は急性尿細管壊死(ATN : acute tubular necrosis)で、この変化が近位尿細管に強く認めた。また、この後に尿路閉塞群のみに、近位尿細管の拡張所見をとらえることができ、MCDK(Multiple cystic dysplastic kidney)の発生要因にATNの関与が示唆された。 膀胱機能に関しては、尿路閉塞後5日までに膀胱壁の過伸展が認められ、その後過伸展で生じた膀胱壁の繊維化が少しずつ認められ、筋繊維芽細胞の発現を認めた。尿路閉塞後14日から出生までの間に膀胱壁の急激な肥厚と線維化が認められることから、尿路閉塞後、極めて早期の膀胱-羊水腔シャントをおこなわなければ膀胱機能を温存することができないと示唆された。今回の実験結果から、胎児期の尿路閉塞患児においては近位尿細管が最も早く障害され、その変化はATNの形であらわれていた。また、尿細管上皮の障害に引き続き尿細管に圧が加わることがMCDKの形成に関与が示唆された。
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