研究概要 |
昨年に引き続いて、皮下軟部組織に発生する血管性病変(vascular malformationおよびhemangioma)について、様々な血管・リンパ管識別マーカーによる免疫組織化学を用いて病変を構成する異常脈管の病理学的検討を進めた。2001-2008年に当科で治療を行った血管性病変症例のうち、生検または切除を施行した症例を対象とし,生検組織は、10%中性緩衝ホルマリンにて固定し、パラフィン包埋された組織の連続切片に対し、HE染色に加え、LYVE-1抗体von Willebrand factor(vWF)抗体、GLUT1、D2-40を用いた免疫染色等を行った。静脈奇形とされた病変は、すべてLYVE-1抗体陰性かつvWF抗体陽性であった。したがって,抗von Wilbrand因子抗体を用いた免疫染色で陽性,抗Lyve-1抗体・D2-40免疫染色ともに陽性反応を認めず,GLUT1が陰性であれば,静脈奇形と診断できる可能性が高いと思われた.リンパ管奇形では,vWF抗体陽性,GLUT-1陰性であるが,抗LYVE-1抗体、D2-40の染色性が一様ではなく、様々な染色結果が得られた。臨床上はリンパ管奇形と診断された症例でも抗Lyve-1抗体・D2-40免疫染色ともに陽性反応を認めないという症例が認められた.また、同一症例でも時期により異なった染色性を示すという興味深い結果が得られた。動静脈奇形、および毛細血管奇形もLYVE-1抗体、vWF抗体の染色性が一様ではなく、GLUT1、D2-40も様々な染色結果が得られた。本研究での詳細な病理学的検討により、同じ診断の血管性病変であってもその構成脈管の内皮細胞の各種血管・リンパ管識別マーカーに対する染色性が異なる病変が多く存在することが明らかとなった。
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