乳房外Paget病/Paget癌患者の87症例の皮膚病変部及び正常部より得タパラフィン切片に対して第VIII因子(血管)及びpodoplalin(リンパ管)に対する抗体を用いて蛍光二重染色を行った。二重蛍光免疫組織染色を行なった切片を共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss LSM510)で観察し、画象ソフトウェアを用いて血管・リンパ管の単位面積あたりの管腔の相対占有面積(BVA)を算出した。これを1.Paget病とは無関係の正常皮膚群、2.手術の際に切除した辺縁皮膚群、3.表皮内(Stage IA)、4.組織学的浸潤癌(Stage IB-IV)の4群に分け、血管・リンパ管各々について検討した。統計学的解析はWelchのt検定およびX^2検定で行い、p値が0.05未満を有意とした。 表皮内癌では血管のBVAは5.77+0.45%であるのに対して、浸潤癌では7.25+0.45%であった(P=0.0267)。一方、正常皮膚、及び手術摘出組織断端皮膚のBVAは各々1.05+0.10%、1.00+0.09%であり、両者に有意差は認めなかった(P=0.684)。しかしながら、正常皮膚と表皮内癌のBVAを比較すると、表皮内癌において明らかにBVAが増加していることが明らかとなった(P<0.001)。従って、乳房外Paget病における血管新生は、病期の進行に伴い増大することが明らかとなった。 一方、リンパ管新生において、表皮内癌ではリンパ管の相対占有面積(LVA)は2.17+0.15%浸潤癌では2.32+0.27%であり、表皮内癌との間に明らかな差は同定し得なかった(P=0.632)。また、正津皮膚、及び手術摘出組織断端皮膚のLVAは各々0.63+0.07%、0.46+0.05%であり、両者に有意差は認めなかった(P=0.063)。しかしながら、正常皮膚と表皮内癌のLVAを比較すると、表皮内癌ではすでにLVAが顕著に増加していることが明らかとなり(P<0.001)、乳房外Paget病におけるリンパ管新生は、表皮内癌の段階で既に強力に誘導され、病期の進行とともに増大するものではないことが明らかとなった。
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