乳房外Paget病/Paget癌患者の87症例の皮膚病変部及び正常部より得たパラフィン切片に対して、第VIII因子(血管)及びpodoplanin(リンパ管)に対する抗体を用いて蛍光二重染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss LSM510)で観察し、画像ソフトウェアを用いて血管・リンパ管の単位面積あたりの管腔の相対占有面積(BVA)を算出した。これを1.正常皮膚群、2.病変部の辺縁正常皮膚群、3.表皮内(Stage IA)、4.組織学的浸潤癌(Stage IB-IV)の4群に分け、統計学的解析(Welchのt検定およびx^2検定:p値が0.05未満で有意)を行った結果、乳房外Paget病における血管新生は病期の進行に伴い増大するが、リンパ管新生は表皮内癌の段階で既に強力に誘導され、病期の進行とともに増大するものではないことが明らかとなった。 一方で浸潤癌43例のうち浸潤度が高く、所属リンパ節転移陽性であった14例において、EカドヘリンおよびNカドヘリン抗体を用いた二重蛍光組織染色から、これらの細胞が皮-間葉転換(EMT)を来しており、腫瘍細胞の高い浸潤能が示唆された。さらに、悪性度の高いPaget細胞はケモカイン受容体CXCR4を発現しており、さらに、原発巣で活性化したリンパ管は、CXCR4の特異的リガンドであるstromal cell-derived factor-1 (SDF-1)を発現していた。 さらに表皮内癌の段階で既に多発リンパ節転移をきたした2症例における蛍光二重染色で、真皮内の拡張したリンパ管内にN-カドヘリンを発現した腫瘍細胞の浸潤がみられたが、表皮内のPaget細胞はN-カドヘリンを発現していなかった。 このことから、乳房外Paget病では、CXCR4-SDF-1及びEMTを介したリンパ管侵襲が、表皮内癌の段階でもリンパ行性転移を促進している可能性が示唆された。
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