近交系同週齢ラット下顎骨移植モデルの作製と実験 6週齢のルイスラットを2頭1組として用い、donor ratから総頚動脈と外頚静脈を血管茎とする下顎骨と周囲組織を採取し、recipient ratの同一動静脈にマイクロサージャリーを用いて吻合し、移植した。移植により、咀嚼運動などの外的力学的ストレスを失った下顎頭では、proliferative zoneからtransitional zone、hypertrophic zoneそしてdegenerative zoneに至る自然な軟骨細胞の配列が乱れ、proliferative zoneの下層に、不規則に骨芽細胞や線維芽細胞が現れ、異所性の骨形成が認められた。このことは、外的力学的因子が、下顎頭における内軟骨性化骨の規則性の維持に重要であり、下顎頭部の未分化間葉系細胞は、外的力学的因子が喪失すると、増殖能は保たれるが分化の方向が変化し、骨芽細胞や線維芽細胞へ分化することを意味している。 そこで次の研究では、咀嚼運動などの外的力学的因子のように、下顎頭の軟骨細胞の分化増殖をコントロールする因子を探ることが目標である。われわれは、咀嚼運動に代わる因子として、他の力学的因子やサイトカインを加えた実験を行っている。 現在、(1)下顎頭の埋入位置を皮下から筋肉内などに移したモデルの作成(2)下顎頭にラバーキャップを被せたモデルの作成(3)移植後に超音波刺激を加えたモデルの作成(4)モデルラットにBMP-2を投与したモデルの作成を行い、その下顎頭の組織形態学的変化を調べている。これらの因子の効果を調べることにより、外的力学的因子に代わり下顎頭軟骨の成長を有効に促進・抑制する因子を求めたいと考えている。
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