再生軟骨移植において再生軟骨周囲に形成される軟骨膜様組織は、生理的軟骨膜同様、再生された軟骨組織の組織維持に重要な役割を果たすことが予想される。本研究の目的は、低酸素下でもアポトーシスが誘導されにくいp53遺伝子欠損マウスを用いて、低酸素ストレスにより軟骨細胞や軟骨膜様組織に惹起されたアポトーシスが軟骨再生に与える影響を検討し、軟骨再生における軟骨膜様組織の役割を解明することにある。本年度は、まずp53遺伝子欠損マウスの軟骨細胞および線維芽細胞における低酸素ストレスへの感受性評価を行った。p53遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスから単離した軟骨細胞および線維芽細胞を低酸素下(5% O_2)で培養し、経時的にTUNEL染色や活性型カスパーゼ、BAX、 BCL2など各種アポトーシス関連遺伝子の発現を評価した。その結果、軟骨細胞では線維芽細胞に比較して低酸素ストレスに耐性を示し、またp53遺伝子欠損マウスの軟骨細胞では低酸素によるアポトーシスに対し更に抵抗性を示す傾向が認められた。マウス虚血モデルにおける再生軟骨の血行、組織構築、細胞死の検索では、純系マウスC57/BL6Jから単離した耳介軟骨細胞とPLLA足場素材を組み合わせて作製した再生軟骨組織を背部皮下へ同系移植し、経時的にその3次元形状をレーザー3次元計測装置で計測した。その後、摘出した再生軟骨のI、II型コラーゲンELISA定量、アルシアンブルーによるプロゲオグリカン比色定量基質産生評価を行った。また、低酸素下における移植再生軟骨およびその周囲組織の血行、組織構築、細胞死を検討するためのマウス虚血モデルの作製法を検討したところ、マウス背部血行を障害することにより、皮下虚血モデルを再現性よく作製することが可能となった。来年度は、同モデルに再生軟骨を移植し、再生軟骨の血行、組織構築、細胞死に関する評価を行う予定にしている。
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