褥瘡発生には、非可逆的な軟部組織損傷を起こす、外力負荷に起因する微小循環障害が関係している。当該研究の目的は(1)静的垂直応力(2)ずり応力(3)虚血再灌流障害の3つの影響を微小循環動態変化から明らかにし、褥瘡予防のための正確な基礎データを提供することにある。 3年間の研究で、垂直応力とずり応力に関しては新しい知見が得られた。 ウイスターラットによる睾丸挙筋を使ったモデルを作製し、生体顕微鏡下に血流が途絶する様子を観察可能になった。Landisが報告した今までの通説では、毛細血管の内圧である32mmHgで、毛細血管がつぶれ毛細血管が閉塞すると考えられていたが、実際に毛細血管がつぶれる圧力は高く、毛細血管は高い圧に耐えることが推察された。 次に、ヒト皮膚微小循環観察をCCDビデオカメラと圧センサーを組み合わせて行った。 80mmHgを超える圧力で、毛細血管は停止するが、毛細血管がつぶれて毛細血管の中の接毛級が描出されなくなる現象は観察されず、ヒト微小循環においても毛細血管が高い圧力に耐えることが示唆された。80mmHgで血流が停止する理由としては、静脈系の血管が動脈と比較して低い圧力でつぶれることが知られており、外力による血流停止は、細静脈から小静脈レベルでの圧力負荷によると考えられた。 さらに、ポリウレタンフィルムを皮膚表面に貼付し、水平方向のずり応力を付加する実験系では、80mmHgよりも低値で血流が途絶することが確認でき、ずり応力は、表層の褥瘡発生においても、深く関与していることが示唆された。
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