外表皮奇型・醜形などの治療には、その範囲がホクロ程度であれば、簡単な縫縮術で治療が可能である。しかし巨大色素性母斑、広範囲色素脱失の場合には植皮が不可欠である。その際醜形の面積が大きいぼど植皮面積が広くなり、そのために必要な採取皮膚の面積も広くなる。従って、健常部位への侵襲が高く、二期的、三期的手術が必要であり、健常部位への侵襲からも患者のQOLを下げる事が大きな欠点である。又、レーザ治療なども考案されているが、広範囲には適応しにくい事、現状では極めて高価であるにも関わらず、その効果は一定しない事から、普及には程遠い現状にある。そこで、この外表皮の色調異常に伴う醜形治療に本講座が日本で始めて臨床応用した培養表皮を用いて、低侵襲で効率的で有効な治療法を確立することを目的にした。 臨床試験部会の承認の下に同意書を得られた巨大母斑、広範囲色素脱失(白斑)症の患者より、約1cm2大の皮膚を採取した。得られた皮膚から、各種の酵素消化法を分離した表皮体性幹細胞を当教室が確立した培養法によって大量に拡大培養し、約2週間後に1200cm2程度の表皮幹細胞シートを得た。 一方、全麻下1200cm2相当の醜形部を用手法によって薄削し、培養によって得られた表皮幹細胞シートを移植した。移植シートを固定するために、フィブリンジェルを移植創部に散布し、ゲル化を確認後に通常のドレッシングを試みた。術後7日目に包交を実施して、移植創部の表皮幹細胞シートの生着を目視観察した。 巨大色素性母斑の患者の場合、色素細胞の分布が正常範囲よりも真皮深部に及ぶことがあり、移植表皮が生着しても再発する可能性もある。本年度実施した患者に於いて、移植7日後に感染を認めない患者については、90%以上の生着を認めた。また、その色調も正常に近づいた。特に色素脱失患者への適用は、極めて有効であった。現在経過を観察中である。
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