インテグリンは細胞表面に存在する細胞接着分子で、2つの異なるタンパク質サブユニット(αとβ)からなるヘテロ2量体の膜貫通糖タンパク質である。インテグリンα11(ITGA11)は最も新しく発見されたαサブユニットである。インテグリンα11β1はコラーゲン結合性のインテグリンで、歯根膜線維芽細胞において歯の萌出時に必要とされること、また、αサブユニットであるインテグリンα11(ITGA11)は非小細胞肺癌において高発現していることなどが報告されているが、その他の生理的・病理的役割についてはよくわかっていない。線維化を促進する主要な分子であるTGF-βでヒト肺線維芽細胞を刺激したとき、ITGA11の発現が著明に亢進することを我々はプロテオーム解析で見出した。また、TGF-β濃度依存的にその発現が亢進することをウェスタンブロットで確かめた。 次に、ITGA11の細胞内ドメインと相互作用するタンパク質を探索し、線維化との関連を検討した。ITGA11の細胞内ドメインをbaitとして、ヒト肺線維芽細胞cDNA libraryに対して酵母two-hybrid法によるスクリーニングを行った。その結果、calcium and integrin binding protein 1 (CIB1)がpreyタンパク質のひとつとして同定された。ITGA11との結合にはCIB1のC末側で2か所のEF-hand motifを含む領域が必要であった。ITGA11とCIB1の結合は免疫沈降法でも確認された。TGF-β処理した肺線維芽細胞およびブレオマイシンにより肺線維症を起こしたマウスの肺組織でのCIB1の発現をウエスタンブロットおよび免疫組織染色により検討したところ、いずれにおいてもCIB1の発現が増加する傾向が見られたことから、CIB1が線維化に関与している可能性が示唆された。
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