H20年度はレックリングハウゼン病に発生する多発性神経線維腫の主な腫瘍構成細胞である、シュワン細胞、線維芽細胞、肥満細胞の細胞株樹立方法を確立し、これらの細胞を用いて細胞間の相互作用について解析実験を行った。実験は、材料調達、症例診断及び、手技全般の実施と総括を清川が担当した。免疫染色・FISH法等抗体や遺伝子学的実験は共同研究者の山本が専門に行っているため山口大学で実施した。また、連携研究者として久留米大学の山内俊彦が培養実験手技およびデータの解析を担当した。 1.神経線維腫由来培養細胞株の樹立 神経線維腫からH20年度中に線維芽細胞と神経様細胞の混合細胞培養法の確立に成功した。また、これらの培養細胞株を、GFAP、S-100、フィブロネクチン、TypeVI collagen等の特異タンパクについて免疫組織化学染色を用いて細胞の起源を同定し、一定の結果を得た。結果の一部は第97回日本病理学会で発表し、また東北ジャーナルに原著として投稿し掲載された。さらに腫瘍細胞の形態的変化についての観察も一定の結果を得ており、原著投稿の準備中である。 2.肥満細胞株の樹立 肥満細胞の培養細胞株樹立については、腫瘍からの肥満細胞の回収及び増殖方法について比重液を用いた濃度勾配法により回収方法の進歩がみられた。現在までに、成長因子はSCF 20ng/ml、IL-3 10ng/mlを用い4〜6週間培養することで高純度の肥満細胞を作製でき、生存期間も10〜12週とかなり延長させることに成功した。 3.共培養による相互作用について 神経線維腫由来培養細胞と肥満細胞の共培養を実施し、細胞増殖、培養液中のサイトカインの測定、mRNAの発現、さらには蛋白質量分析により増殖メカニズムの解明に繋がると考えられる、いくらかの蛋白を同定できた。これらの結果はH21年度中に学会発表および論文投稿を予定している。
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