H21年度は、細胞株樹立に成功した多発性神経線維腫(以下、NF1)の主な腫瘍構成細胞である、シュワン細胞、線維芽細胞を用いて細胞間の相互作用について解析実験を行った。実験は、材料調達、症例診断及び、手技全般の実施と総括を清川が担当した。免疫組織学的実験、細胞シグナル伝達実験、遺伝子学的・分子生物学的実験は共同研究者の山本が山口大学で実施した。また、連携研究者として久留米大学の山内俊彦が培養実験手技およびデータの解析を担当した。 1.NF1細胞培養細胞株の免疫組織学的検索 NF1から確立した混合培養細胞株を、GFAP、S-100、フィブロネクチン、Type VI collagen等の特異タンパクについて免疫組織化学染色を用いて細胞の起源を同定し、一定の結果を得た。結果の一部は第48回日本臨床細胞学会秋期大会で発表した。これらの結果を原著投稿準備中である。 2.NF1由来細胞間シグナル伝達実験 腫瘍細胞の増殖に細胞間連絡による直接的なシグナル伝達機構が関与しているかを検索するため、細胞表面レセプターPAR(protease-activated receptor)に着目し、細胞内Ca^<2+>動向を更に詳細に検索した。その結果、マスト細胞とNF1細胞がPAR2を介するシグナル伝達機構が存在することが示唆され、第98回日本病理学会および第113回山口大学医学会学術講演会で報告した。これらの結果を原著投稿準備中である。 3.NF1に対するトラニラストの増殖抑制効果の検討 NF1細胞とマスト細胞の共培養系に抗アレルギー薬であるトラニラストを添加し、細胞増殖抑制効果を解析した。mRNA定量と質量分析の結果、トラニラストにより数カ所の細胞増殖抑制ポイントが存在することが示唆され、トラニラストのNF1細胞増殖抑制効果が期待された。結果の一部は第18回日本形成外科学会基礎学術集会期大会で発表した。
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