H22年度は、細胞株樹立に成功した多発性神経線維腫(以下、NF1)の主な腫瘍構成細胞である、シュワン細胞、線維芽細胞を用いてin vitroにおける細胞間の相互作用について解析実験を行った。実験は、材料調達、症例診断及び、手技全般の実施と総括を清川が担当した。免疫組織学的実験、細胞シグナル伝達実験、遺伝子学的・分子生物学的実験は共同研究者の山本が山口大学で実施した。また、連携研究者として久留米大学の山内俊彦が培養実験手技およびデータの解析を担当した。 1. NF1^<+/->細胞とNF1^<+/+>細胞のアクチンフィラメント構築の差異について NF1から確立した混合培養細胞株を、GFAP、S-100、フィブロネクチン、TypeVI collagen等の特異タンパクについて免疫組織化学染色を用いて神経系および線維芽細胞系等の起源を同定し、さらに線維芽細胞についてアクチンフィラメントの構築について検索し、正常細胞とは異なる構築を持つことを確認した。これらの結果は第99回日本病理学会総会で報告した。 2. NF1^<+/->細胞とマスト細胞培養時の細胞間相互作用について 腫瘍細胞の増殖にマスト細胞がどのように関与するかを検索するため、共培養時の細胞に発現する細胞増殖に関するmRNAについて定量PCR法を用いて検索した。その結果、各種細胞増殖因子について共培養で有意に発現が増加していることを見いだし、第99回日本病理学会総会で報告した。 3. NF1に対するトラニラストの増殖抑制効果の検討 NF1細胞とマスト細胞の共培養系に抗アレルギー薬であるトラニラストを添加し、細胞増殖抑制効果を解析した。mRNA定量と質量分析の結果、新たにトラニラストにより数カ所の細胞増殖および細胞接着因子に対する抑制効果が示された。結果の一部は第19回日本形成外科学会基礎学術集会で発表した。
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