研究概要 |
ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)はプロテインキナーゼC(PKC)の生理的活性化因子であるDGのリン酸化酵素であり、DGの代謝を介してPKC活性を制御すると考えられている。我々はこれまでに、正常ではニューロンに発現するDGKzetaがラット脳虚血モデルの梗塞壊死領域においては貪食細胞に発現することを見出した。脳損傷後に形成される瘢痕組織にはミクログリア/マクロファージ、アストロサイト、新生血管など多様な細胞が含まれ、その相互作用によって組織の修復が行われる。本研究ではこの領域のグリア細胞におけるDGKzetaの発現を検討した。 液体窒素で冷却した鉛をラット脳に押し当てることにより大脳皮質に瘢痕組織の形成を誘導した。DGKζ抗体による免疫染色の結果、虚血モデルの梗塞壊死領域と同様、瘢痕領域にも免疫陽性細胞が検出され、この細胞はミクログリア/マクロファージのマーカーであるIbal抗体と共陽性を示した。この細胞はさらに、活性化型貪食細胞のマーカーである抗ED1抗体にも陽性反応を示すことから、瘢痕領域のDGKζ陽性細胞は活性化型の細胞であることが明らかとなった。また、非活性化型ミクログリアにはDGKζ免疫陽性反応は認められなかった。一方、DGにより活性化されるcPKC(PKCα,-βII,-γ)の発現様式を免疫組織化学的に解析した結果、瘢痕組織にはPKCα陽性細胞のみが検出された。この細胞はミクグリア/マクロファージのマーカー抗体とは反応せず、GFAP抗体と共陽性反応を示すことから、アストロサイトであると考えられた。
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