研究課題/領域番号 |
20592117
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
磯谷 栄二 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (90251529)
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研究分担者 |
大友 康裕 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (40176946)
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キーワード | くも膜下出血 / カテコラミン / BNP / 神経原性肺水腫 / PiCCO plus / CSWS / 肺血管外水分量 / 血管内容量の再分布 |
研究概要 |
研究成果の具体的内容:くも膜下出血患者54例に対して血中カテコラミンとナトリウム利尿ペプチドを14日間測定した。血中ノルアドレナリン・ドパミン・BNPは持続的に高値を示した。転帰不良例では、転帰良好例に比べて、これらの値は有意に高かった。くも膜下出血患者42例に対してPiCCO plusを用いて循環動態の評価を行った。くも膜下出血後の水分出納は負に傾いており、中心静脈圧も低値で推移した。一方、胸腔内の血液量は増加しており、肺血管の透過性は正常範囲にとどまるものの、肺の血管外水分量は高くなっていた。すなわち、hydrostatic pulmonary edemaの状態となっており、肺の血管外水分量は胸腔内血液量の35%以上に相当した。以上のことから、くも膜下出血後には視床下部ペプチドの活性が生じ、脳幹部に存在するカテコラミンの中枢に働きかけることで、血中カテコラミン濃度が上昇し、神経原性肺水腫を惹起する。これによって心臓のpreloadが亢進し、主として右心室からBNPが放出される。結果的にナトリウム利尿が生じることで、血管内脱水の傾向となるにもかかわらず、低ナトリウム血症を惹起する。これが、いわゆるcerebral salt wasting syndromeの発症機序である。 研究成果の意義・重要性:くも膜下出血は循環管理の困難な疾患のひとつであるが、今回の研究により、くも膜下出血に特徴的な循環動態を捉えることができたことで、実際の患者管理に大きく寄与することになると考えられる。
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