研究概要 |
【目的】我々はくも膜下出血後の患者に連続心拍出量測定装置PiCCO plusを使った循環管理をおこなう多施設共同研究を始めている。本研究の目的は、くも膜下出血後の循環動態の特徴を把握することと、心不全・肺水腫といった合併症を併発することなく十分な心拍出量を得るための指標を確立することにある。【方法】くも膜下出血術後早期に上大静脈への中心静脈カテーテルを挿入し、上腕動脈から4Fr 8cmのPiCCOカテーテルを挿入した。連続心拍出量測定によるOutput, afterload, contractionの各項目と熱希釈法を用いたvolume management, lungの各項目を連日測定した。【結果】現在までに77例が登録され、62例の解析を終了した。Hunt & Kosnik Grade Vで血管内手術を受けた症例で、心拍出量が低下し末梢血管抵抗が高いといった、afterload mismatchの状態を呈した症例がみられた。これらの症例以外は、全例output, afterload, contractionといった左心機能は正常であった。熱希釈法によって計測されるvolume management, lungの項目においては、くも膜下出血の特徴的な循環動態が観察された。心臓拡張末期容量や胸腔内血液量は正常上限を超えるものが多く、肺血管外水分量は11mg/kg以上と肺水腫の状態であった。肺血管透過性係数は正常範囲内にあり、hydrostatic pulmonary edemaの状態にあった。【結論】現在進行中の多施設共同研究のpreliminary reportを報告した。今回多施設共同研究に登録された症例の多くは、十分な前負荷と正常範囲内の心拍出量といった理想的な管理がなされていた。今後は心不全・肺水腫を合併することなく、十分な心拍出量を獲得するための心臓拡張末期容量や胸腔内血液量さらには肺血管外水分量のcut-off値の算出することで、くも膜下出血後の新たな循環動態の指標を作成する予定である。
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