研究概要 |
過大侵襲時における免疫修飾作用としての超短時間作用型β1遮断薬の心筋に対する効果を調べるため、全身性炎症反応症候群(SIRS)の診断基準を満たす患者の頻脈性の発作性心房細動に対して塩酸ランジオロール(LAN)を投与した症例について心拍数・血圧(n=16)、心係数等の血行動態(n=9)を測定し、炎症の程度とLANの効果との関連について検討した。またLAN投与前後の炎症性サイトカイン濃度の変化を測定した(n=6)。LAN投与前の白血球数やCRP値とLANの効果との間には関連は認めなかったが、SIRS診断基準の白血球数該当患者(白血球数>12,000/mm^3あるいは<4,000mm^3あるいは幼弱球数>10%)では血圧低下作用が収縮期で有意に強く(P=0.0016)、拡張期で強い傾向があり(P=0.1217)、心拍数低下作用が弱い傾向にあった(P=0.1351)。心係数低下作用や一回拍出係数増加作用に有意差はなかった。以上より白血球数増加を伴うSIRS患者ではLANにより心拍数は下がりにくく、血圧は下がりやすいことが示唆された。LAN投与前後の血中サイトカインの変化について、IL-6濃度は投与前と投与12時間後で535±676→249±215pg/ml(P=0.2093)であり、対数変換すると有意差を認めた(P=0.0141)。IL-10は11.0±10.0→8.0±12.8pg/ml(P=0.3446)、TNF-αは3.90±2.97→3.35±1.58pg/ml(P=0.3822)で線形、対数ともに投与前後で有意差は認めなかった。以上よりLAN投与によりIL-6濃度が低下することが判明した。敗血症ラットモデルを用いた研究については、齧歯類では塩酸ランジオロールの代謝速度がヒトと異なり著しく速くin vivo研究は実行が困難であることが判明したため遂行できなかった。
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