研究概要 |
我々は平成20年度に出血性ショック(HS)後のInnateImmunity(自然免疫系)の活性化による腸管障害に対して内因性に誘導されるストレス蛋白HemeOxygenase(HO)-1が腸管細胞保護的に働くことを示した。近年、重症患者にとっての必須アミノ酸であるグルタミン(Gln)がストレス蛋白誘導能を有することが報告された。そこで平成21年度はGln投与がHS後の腸管障害に及ぼす影響をHO-1の誘導能と関連させて検討した。雄性SDラットにGln(0.75g/kg)を静注し回腸のHO-1蛋白発現を免疫染色にて検討した。また、脱血・返血によりHSモデルを作成し、Gln投与(Gln/HS)群、溶解液を投与したVehicle/HS群、Glnに加えてHO-1の拮抗阻害薬:tin mesoporphyrin (SnMP)を投与しGln/SnMP/HS群の3群に分けた。蘇生開始時より回腸を採取し、TNF-alpha, iNOS, ICAM-1, VCAM-1, Bcl-2, IL-10 mRNA発現、MPO活性と好中球染色で好中球浸潤をISOL染色、activated caspase-3染色でアポトーシス細胞を検索した。その結果、Glnは回腸にHO-1蛋白を誘導した。また、HSモデルではVehicle/HS群において増加したTNF-alpha、iNOS、ICAM-1、VCAM-1 mRNA、MPO活性、組織内好中球数、アポトーシス細胞数がGln/HS群では減少し、IL-10、Bc1-2 mRNAが上昇した。しかし、これらの効果はGln/SnMP/HS群では消滅した。以上より、GlnはHO-1の誘導を介して、抗炎症、抗アポトーシス作用を発揮し、出血性ショックによる組織傷害を改善すると考えられた。
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