研究概要 |
本研究の目的は、敗血症性急性肺損傷の発生メカニズムにおける好中球の役割を、好中球の転写因子C/EBP (CCAAT/enhancer binding protein)βに主に着目し評価することである。研究初年度である平成20年度はまず、C/EBPβ遺伝子ノックアウトマウスを用いた動物実験モデルの基盤整備を開始した。C/EBPβ遺伝子ノックアウトマウスを繁殖させ、定期的な研究を行える程度にノックアウトマウスを得る環境を整えた。さらに、野生型マウスを用いてCandida albicansによる菌血症モデル、及びリポポリサッカライド気管内注入による急性肺障害の実験モデルを確立した。 一方、フローサイトメータを用いて、好中球の分化過程を連続的に観察するための染色方法を考案した。未分化細胞のマーカーとしてc-kit, CD34、顆粒球分化のマーカーとしてLy6G、他系統のマーカーとしてLineage=CD4, CD8, CD19, B220, Ter119、死細胞のマーカーとしてPIを用い、骨髄中及び末梢血中の好中球の造血変化を定常状態とCandida albicansによる菌血症状態により評価、比較した。この手法により好中球供給のダイナミクスを連続的に把握できると確認できた。本研究成果の一部は第83回日本感染症学会総会、及び第49回Interscience conference of antimicrobial agents and chemotherapyにて報告予定である。 次年度以降は、これらの手法を応用し、C/EBPβ遺伝子ノックアウトマウスを用いた敗血症及び敗血症性肺損傷時の好中球機能解析へとつなげていく予定である。
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