研究概要 |
平成23年度は、これまでの研究成果を踏まえ、敗血症および敗血症性肺損傷の発生における好中球の役割を解明するため、転写因子C/EBPβに注目した研究を継続した。 細胞周期解析では、敗血症時の好中球造血において前駆細胞レベルの未分化な細胞集団のみならず、骨髄球などのやや分化した細胞集団でも細胞周期の活性化を認めた。また造血過程ごとに細胞を回収しC/EBPβのタンパク量を検討したところ、造血過程全体を通してC/EBPβの発現が著明に上昇していた。これらの結果は、敗血症時には未分化~やや分化した細胞集団にC/EBPβが作用し、細胞周期が活性化されることで好中球造血が亢進する可能性を示唆した。分化した細胞集団におけるC/EBPβの発現の上昇は好中球の機能の活性化に関与している可能性もある。以上の結果は第72回日本血液学会学術集会、及び52^<st> ASH ANNUAL MEETING AND EXPOSITIONにて報告した。 次に、C/EBPβの関与をさらに明確にするため、C/EBPβのノックアウトマウス,及びノックアウトマウス由来の骨髄細胞を移植したマウスを用いた敗血症病態の検討に着手中である。本実験は途中段階であるが、敗血症や敗血症性肺障害に対してC/EBPβをターゲットにした治療法を考案するために必要な研究であり、継続したい。
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