研究課題
【はじめに】脳におけるフリーラジカルの産生には、いくつかの系路が知られている。本検討ではNADPH oxidase enzymeを構成する5つのサブユニットの一つであるgp91phox(NOX2)に注目し、頭部外傷におけるsuperoxide radical産生におけるgp91phoxの役割について検討を行った。【方法】C57blackマウスとgp91phox遺伝子欠損マウスを用いて、実験的頭部外傷モデル(CCIモデル)を作成し、外傷後におけるgp91phoxの経時的発現と発現細胞、特に活性型ミクログリアのタイプについて検討した。さらにsuperoxide radicalの産生及び産生細胞について検討した。さらには、gp91phoxKOマウスにおける脳損傷と細胞死の抑制効果についてもそれぞれ検討した。【結果】gp91phoxは早期より外傷周囲のameboid microgliaで主に発現し、外傷2日後にもっとも強かった。superoxide radicalは外傷周囲に強く産生され、その産生細胞はgp91phox発現細胞と共在していた。外傷後2日における損傷面積とTUNEL陽性細胞数はKOマウスで有意に抑制されていた。また、gp91phox発現しているmicrogliaはclassical activatedタイプ様のmicrogliaであった。【考察】脳損傷後におけるgp91phoxの発現と動態、さらにはgp91phoxを介して産生されるフリーラジカルの役割について明らかとなった。classical activated microgliaにおけるgp91phoxさらにはNADPH oxidase enzymeの制御することが脳損傷の治療として有用であると考えられた。今後,microgliaの分化誘導が頭部外傷治療、特に酸化ストレス制御において重要であることが証明された。
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