研究概要 |
低体温中の生体の炎症反応の変化を知ることにより、脳低温療法の病理学的な検討が可能と考えられた。内皮細胞のLipopolysaccharide(LPS)刺激低温培養下でのIL-6とIL-8のmRNAの安定性を検討した。人臍帯血内皮細胞(HUVEC)をLPSで刺激後に常温群(37℃),低温群(30℃)で24時間培養した。その後LPSを含まない培養液にActinomicin Dを加えて6時間培養を継続し二群間のIL-6とIL-8のmRNAの発現をTaq-Man法で測定し比較した。IL-6mRNAの発現は常温群で93%の減少を認めたが、低温群では94%の減少であった。IL-8mRNAの発現は常温群で50%の減少を認めたが、低温群では21%の減少であった。今回の検討において、LPS刺激による内皮細胞のmRNAの安定性は低温によって、24時間の時点ではIL-6は変化がなかったがIL-8は低温により増加していた。脳低温療法では、低温からの復温により炎症所見が増悪する現象が知られているが、これはIL-8のmRNAの安定性が増すことにより炎症反応が増強する可能性があることが示唆された。昨年度までは、この結果を国内外の学会において発表を行ってきた。 著者らは、上記の結果に加え、人臍帯血内皮細胞の長期間低温培養下ではIL-8のタンパクは抑制されるがmRNAは増強されたという結果を研究発表してきた。今年度は、この二つの結果を併せて英文論文として作成した。この論文を、現在欧文ジャーナル(Inflammatory Research)に投稿中である。
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