平成21年度は、前年度に判明したLipopolysaccharide(LPS)48時間連続投与後に発生する誘発電位検査上の振幅の低下の原因を探求するために追加実験として以下の実験を行った。 80匹のラットを無作為に8群(対照群、LPS48時間投与群、生理的食塩水48時間投与+Danaparoid群、LPS+Danaparoid群、生理的食塩水48時間投与+antithrombin III群、LPS48時間投与+Antithrombin III群、生理的食塩水48時間投与+Danaparoid+Antithrombin III群、LPS48時間投与+Danaparoid+Antithrombin III群)に分類し、以下の実験を行った。 (1)誘発電位上の強さ時間曲線を求め、時値、基電流を測定 (2)誘発電位上の2発刺激により絶対不応期を測定 (3)病理学的変化の検討(光顕像:LFBB二重染色、HE染色、電顕像) 結果として、LPS投与群では絶対不応期は変化せず、また、基電流の有意な上昇が認められことから、LPS48時間連続投与では活動電位の閾値の上昇が生じており、DanaparoidおよびAntithrombin IIIの投与により、興味深い結果が得られた。座骨神経の病理像を光顕像(LFBB二重染色、HE染色)、電子顕微鏡像で調べた結果、LPS投与群においても軸索変性や炎症などの特殊な変化を認めなかった。 すなわち、これらの結果より、敗血症に伴う重症末梢神経炎では病理学的異常が出現する前に閾膜電位の上昇などの電気生理学的変化が生じており、DanaparoidおよびAntithrombin IIIの投与により、血流速度の改善のみならず、これらの結果が変化する可能性が指摘された。
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