研究概要 |
平成22年度においては、骨発生と骨修復における石灰化過程を比較検討することで、修復骨の特性を明らかとするとともに、「骨基質の石灰化進行」を検討する骨修復実験系の確立を目指した。 (骨発生に関する検討)胎生15、16、18日齢ラット下顎骨および頭蓋骨の骨発生における骨密度を、マイクロX線CTを用いて検討した。また、非脱灰切片をSEM-EDX(エネルギー分散型X線分析装置)で分析して組織局所に含まれるCa,P,C,N,S,Oの相対的な元素濃度を解析した。さらに胎生18日ラット試料の隣接切片を用いて、骨発生領域におけるMMPの活性をin situ zymographyで検討した。その結果、骨発生領域におけるX線不透過性(骨密度)の増強に伴い、Ca,Pの高い集積が認められた。一方、CはCaとPが集積する領域で減少し、Ca,PとCの濃度分布は相補的な関係を示した。また、骨発生領域には高いMMP活性が認められた。 (骨修復に関する検討)ラット頭頂骨に直径3.3mmの企画化骨欠損を作製し、修復骨を術後1週、2週、4週で検討した。マイクロX線CTを用いて骨修復の骨密度を検討した。また、非脱灰切片をSEM-EDXで分析して修復骨組織局所に含まれるCa,P,C,N,S,Oの相対的な元素濃度を解析した。さらに隣接切片を用いて修復骨組織におけるMMPの活性をin situ zymographyを用いて検討した。その結果、骨修復領域で骨密度の増加に伴い、Ca,Pの高い集積が認められた。一方、Ca,PとCの濃度分布は相補的な関係を示した。また、修復骨組織に高いMMP活性が認められた。 以上より、石灰化とMMP活性の観点から骨修復が骨発生と対応する過程を辿ることが明らかとなった。上記実験系は骨修復における「骨基質の石灰化進行」を検討する上で、有用な実験系と考えられた。
|