研究概要 |
FGF23の特異的シグナルを標的とした歯・骨疾患の新規治療法を確立することを目的として、骨芽細胞を用い、FGF23の石灰化抑制作用のメカニズムの一部を明らかにした。新規ラット新生仔頭蓋冠由来細胞由来の骨芽細胞を高密度で培養し、基質石灰化を24-48時間内で観察するモデルを作製した。このモデルに組換え線維芽細胞増殖因子(recombinant fibroblast growth factor, rFGF)23を添加すると、すでに報告したアデノウイルスを用いた強制発現のモデル(J Bone Miner Res,23,939-948,2008)と同様、石灰化を抑制した。このFGF23の作用はマップキナーゼ(ERK)を介すること、老化関連因子として発見されたI型膜タンパクKlothoのsoluble form(rsKlotho)、FGF受容体との複合体形成が不可欠であることを明らかにした。通常、骨芽細胞ではKlothoは発現していないが、その細胞外ドメインが血流を循環することが知れており、実際に、sKlothoを除去した血清を用いると、基質石灰化に対するrFGF23の作用は消失した。また、Klothoのミュータントマウス(Klotho欠損)から得た骨芽細胞を通常の条件で培養すると、野生型マウスのそれよりもむしろ石灰化は促進された。従来、FGF23は近位尿細管のリンの再吸収とビタミンD3活性化酵素を挿制し、低リン血症を引き起こすことで骨の石灰化障害を引き起こすとされてきた。これらの結果は、FGF23の骨芽細胞への直接作用とその作用機序の一端を示すものであり、これによりFGF23シグナルを標的とした歯・骨疾患の新規治療法の足がかりができたといえる。
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