主に、熱ショック蛋白質の一つであるHsp27(Hsp25)の発現と、胎生期組織の消失に重要な役割を果たすと考えられているアポトーシスおよび増殖抑制との関連について、マウスおよびラットの成体・胎児を使用し、免疫組織化学的、実験発生学的に研究を行い、次のような結果及び現段階での結論を得た。 1)熱ショック蛋白質によるアポトーシスの調節機構 口蓋発生におけるmedial edge epitheliumと甲状舌管の消失に関して、同部上皮の存在中には強いHsp27 (Hsp25) の発現・局在が継続的に観察されたが、発現の減弱または消失の場所・時期に一致してアポトーシスが生じ、細胞および組織が消失することがわかった。 2)熱ショック蛋白質による上皮細胞の増殖抑制機構 歯胚および歯肉の発生に関して、上皮細胞に生じるHsp27は、同部の細胞増殖を抑制し、増殖活性とHsp27の発現は相反的であることが明らかとなった。歯胚の器官培養により、Hsp27の発現抑制は細胞増殖の亢進による巨大な歯胚を生じたが、構成する上皮細胞の分化の進行にはほとんど影響しなかった。 3)メッケル軟骨の消失機構 胎生期に消失するメッケル軟骨では、その消失過程ではアポトーシスはほとんど認められ無かった。しかし顕著なアポトーシスが軟骨発生・成長期の軟骨膜に顕著であることがわかった。
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