研究概要 |
新たな骨形成タンパク質、NELL1のIn vivoにおける骨形成能の検定を行った。検定はラットを用いて行われ、担体はコラーゲンスポンジを使用した。検定に用いた実験モデルは、以下の通りである。(1)頭蓋骨欠損モデル(2)大腿骨欠損モデル(3)筋肉内埋入モデル(4)血管柄付脂肪組織モデル。 結果をまとめると、(1)術後2,4週で骨誘導が認められるが、濃度依存性の傾向は認められなかった。(2)術後4週で旺盛な骨誘導を認めた。区域切除された大腿骨の連続性は回復され、固定に用いたプレートを取り囲む大量の骨組織が認められた。誘導された骨組織には、多量の軟骨が認められ、長期にわたって残存した。(3)BMP2とは異なり、筋肉内での異所性骨誘導は認められなかった。(4)これもBMP2とは異なり、脂肪組織での異所性骨誘導は認められなかった。ただし一部に、造血様組織が認められた。 共同研究者の黒田等によれば、NELL1のシグナルカスケードは、BMP2とは異なっている。実際In vivoにおいて、NELL1はBMP2程の強力な異所性骨誘導能は示さなかった。しかし、骨欠損部においては、一定の骨誘導能を示すことが確かめられ、骨形成タンパク質として、臨床応用が可能であることが示唆された。また、大腿骨欠損モデルにおいて、骨誘導に際して軟骨が観察されるのも特徴的であった。単なる軟骨内骨化とは言い難い所見もあり、濃度や担体によっては、軟骨誘導の可能性もあるものと思われた。
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