研究概要 |
唾液腺の腺房細胞内および腺房細胞間を様々な修飾を受けながら結合組織側から腺腔内へと輸送・分泌される唾液分子および水の透過経路すなわち、細胞内経路と傍細胞経路とがある。本研究では、唾液腺の分泌にともなうタイト結合(TJ)の構造と、構成蛋白質の局在変化の検討を通して、腺房細胞間の傍細胞経路における選択的な透過性調節機序について研究を行なっている。1)TJと細胞骨格の超微構造変化を三次元的に解析するため、ラット灌流顎下腺をcarbachol(CCh)と、isoproterenol(IPR)により刺激し、液体ヘリウム下に金属圧着法による未固定新鮮組織の急速凍結固定後、ディープエッチングレプリカを作成した。3D-TEM観察において、細胞間分泌細管のタイト結合の接着部位の膜内粒子と直下の細胞骨格を透過電子顕微鏡にて観察し、CCh後にIPR刺激を加えたものでは、TJ部から腺腔側膜直下のアクチン細胞骨格が分泌にともなって改変され、TJを介した水やイオン、低分子量の分子等の傍細胞輸送を増大させることが示唆された(Hashimoto, S. & Murakami, M., et. al., J.Medical Investigation, 2009)。2)傍細胞経路における選択的輸送調節機構の解析のために、ラット灌流唾液腺を用いて傍細胞経路を通過するトレーサー分子を、分光共焦点レーザー顕微鏡観察と高速スキャンヘッド(Zeiss社製・5-Live)による高時間分解能の4D解析を試みた。1/secの3D画像のタイムシリーズ解析では、IPRによるβアドレナリン受容体への分泌刺激により、腺房細胞の容積の減少が経時的に記録できたと共に、血管灌流したLucifer YellowおよびRhodaminは、非刺激時には腺房細胞周囲の細胞間隙にとどまるが、IPR投与後には、細胞間分泌細管内へと移行する像が観察されたことから、β受容体刺激によりTJを介した傍細胞輸送経路が開くことが示唆された。(Hashimoto, S.& Murakami, M., XXIth ISMS, Taormina, 2010)
|