研究概要 |
エナメル質の組織発生は歯の咬頭形成と深く関わっているが,有袋類のあるでは有胎盤類とは異なった形成順序が知られている.ハイイロジネズミオポッサムを試料にマイクロCTとアリザリンレッド染色を用いて調べた臼歯の咬頭形成順序は,これまで報告された近縁の種とは異なっているという新しい知見が得られた.その特徴を学会発表し,論文にした.(International Journal of Oral-Medical Science, 8(2),112-115(2009)). 束柱目デスモスチルス類に関しては,能登半島の新しい標本を同定し中期中新世の西海岸に2系統のデスモスチルスが生息していたという新しい知見が得られ,学会発表をおこなった.その同定にはエナメル質の特徴が決手となったが,当時の生息環境を示す貴重な標本として論文を準備している. 長鼻類については茨城県産のステゴロホドンゾウ切歯のエナメル質の研究を進めている.現生長鼻類との比較研究に貴重な標本となり,古生物学者と共同し投稿を準備している.更に,2010年2月にタイのチェンマイ大学においてアジアゾウ新生児の未萌出切歯と切歯歯胚を剖出し,頭蓋における位置関係を記載する作業を行った.長鼻類の切歯の発生には不明な点が多く慎重に論文を準備している.また同時に石灰化したリンパ節の組織観察と分析をおこなった.これは,生体の石灰化の問題として捉えて病理学者と共同で投稿の準備を進めている. 予定していた南米での哺乳類の研究は現地の事情(インフルエンザ等)により延期することになったが,次年度以降の協力を得ることができた. 更に,2010年3月には国立台湾自然科学博物館と国立台湾博物館にて東アジアの哺乳類の研究を行い,将来の足掛かりをつくることができた.
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