研究概要 |
束柱目デスモスチルヌ類に関して,能登半島の新しい標本を同定し中期新世の西海岸に2系統の束柱目(デスモスチルスとパレオパラドキシア)が生息していたという新しい知見が得られ,学会発表をおこなった.その同定にはエナメル質の特徴が決め手となったが,当時の生息環境を示す貴重な標本として記載論文を準備し,パレオパラドキシアの切歯エナメル質は報告が少ないので別に論文とした(International Journal of Oral-Medical Science,9(2),154-158(2010)). 長鼻類については茨城県産のステゴロホドンゾウ切歯のエナメル質の観察を行い記載論文を投稿した.更に'エナメルバンド'について検索を進めるため,国内外の博物館(茨城県立自然博物館等)との共同研究を開始している.長鼻類の切歯の発生には不明な点が多く慎重に論文を準備している. 南米での独特な哺乳類の研究は現地の事情により延期になっているが,前年度に引き続き台湾国立自然科学博物館との東アジアの哺乳類に関する共同研究を進め,台湾産のサイ化石の臼歯を試料とする事が可能となり論文発表の準備を進めている. ハイイロジネズミオポッサムの歯の発生を全身の発生過程の中で検討するために,生殖過程をビデオ録画で記録し交尾行動と出産行動を観察した.その結果,胎内のオポッサム胚を時間単位で採取する事が可能となった.詳細な解析は遺伝子発現を含めて検討している.また,生殖行動と出産前の胚の特徴を学会発表し,論文を準備している.分子発生学的な研究については東北大学との共同研究を進める事とした.
|