研究概要 |
口腔粘膜の難治性疾患である口腔扁平苔癬(OLP)は,未だ病因が明らかでなく,その治療法も開発されておらず,患者さんへは対症療法が行われている。OLPは,臨床診断のみならず病理組織診断においても苦慮することが多く,さらに口腔癌への進展例が報告されることからも注目され,より正確な診断法の確立が望まれている。我々は,本研究費の補助を受けて,口腔扁平苔癬および口腔癌境界病変からサンプルを採取してプロテオーム解析により,類縁病変と病態を比較解析することで,診断の分子マーカーを得ることができると考えた。OLP,Carcinoma in situ(CIS),Oral Cancer(OC)のプロテオーム解析により,230のタンパクを検出し,その中から90個のタンパクについて各病変での発現量の比較を行ない,OLPと他の病変との鑑別にkeratin13,keratin17,HSP,Ki67,HSP70,HSP90の各分子が有効出ることを見いだした。特にkeratin13,keratin17,Ki67,HSP70,のパネルにより,OLPとCISおよびOCの鑑別の分子マーカーの候補として用いることのできる可能性が示された。現在,それぞれ的確に診断された症例を用いた多数例の解析を進めている。また,OLPの病態解析の結果から,病巣上皮がPGE2を多量に産制して樹状細胞を活性化しているとの仮説をたて,我々がこれまでに確立した口腔粘膜遅延型アレルギーモデルマウスを用いて,骨髄細胞からPGE2存在下に樹状細胞分化誘導をin vitroで検討し,CCR7,Fascinを表出する樹状細胞を認めた。また,このマウスでCOXインヒビターによりPGE2産制を抑制すると,病巣のリンパ球浸潤は減少した。このことは,OLPの特徴であるT細胞のサブセツトであるTh1細胞浸潤を形成するのに病巣上皮細胞の産生するPGE2が関与することを明らかにした。これらの研究成果を国内外の学会において報告した。
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