雌雄マウス顎下腺導管の分泌顆粒を保有する領域、顆粒性膨大部(GCT)はホルモン受容体をもち、その分化・成熟の過程はAndrogenと甲状腺ホルモンに依存し、雌のそれよりも雄ではGCT細胞が大きく、数も多く、性差を示す。GCT-様細胞は雄マウス舌下腺にも数多く認められ、雌マウス舌下腺にもホルモン処理によって誘導される(Kurabuchi and Gresik 2001)。舌下腺GCT細胞もホルモンに依存し、顎下腺GCT細胞と同じ活性物質を産生・分泌していることを報告した(Kurabuchi et al.2008)。さらに、耳下腺導管(正常では、GCT様細胞は認められない)にもGCT-様細胞がホルモン処理によって誘導されることも既に報告した(Kurabuchi S 2006)。 1、当該年度では、ホルモン処理によって誘導された耳下腺GCT-様細胞を免疫組織化学の手技を用いて精査し、顎下腺GCT細胞と同様な活性物質を産生していることを報告した(Kurabuchi and Hosoi 2009)。耳下腺に誘導されたGCT細胞は、顎下腺GCT細胞よりも小型で、活性物質のうちmK1、EGF、NGFを発現したが、reninに対しては陰性であった。耳下腺に誘導したGCT細胞の表現型や含まれる発現する活性物質を考慮すると、顎下腺や舌下腺と比較して、耳下腺導管ではホルモンに対する反応性が極めて低いことが示唆された。 2、さらに、ホルモン処理を施したマウスを材料として、神経作動薬を投与し、顎下腺、舌下腺、耳下腺の唾液分泌の調節機構を検討した(Kurabuchi and Hosoi 2009)。α-作動薬、Methoxamine投与後経時的に調べた結果、顎下腺と耳下腺のGCT細胞に分泌顆粒の放出像が認められたが、舌下腺のGCT細胞には放出像は全く認められなかった。顎下腺と舌下腺の分泌は同じ顔面神経で調節されているが、α-作動薬に舌下腺GCT細胞が応答しないという興味深い結果が得られた。
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