研究概要 |
平成21年度は、生後6、12ヶ月のラット唾液腺組織の追加採取に加えて、主として生後18ヶ月の試料採取を中心に行いました。ラットの体重は平均で、生後6ヶ月で約650g、生後12ヶ月で約770g、生後18ヶ月で約836gまで増加し、全体としては緩やかな増加傾向を呈していましたが、生後18ヶ月をピークに減少傾向を示す個体も出現してきました。生後18ヶ月の顎下腺、舌下腺において、分泌細胞の分泌物質の性状を組織化学的に検討する目的で行ったH-E染色、糖質検出のためのPAS(過ヨウ素酸-シッフ反応)、アルシアンブルー(AB)染色の結果は、生後6、12ヶ月の染色性と比較して際立った変化は認められませんでした。一方、老齢化指標となるアミロイド蛋白の局在を検出する目的で行ったコンゴーレッド染色では、生後18ヶ月以降の個体において顎下腺、舌下腺ともに導管周囲および腺房細胞間、小葉間結合組織にアミロイド蛋白の沈着を認めるようになりました。導管および腺房細胞に発現する蛋白質の局在を検討する目的で行った免疫組織化学的検索では、生後18ヶ月の舌下腺粘液細胞において、SMGD, Mucin19抗体、漿液性終末部(半月)はSMGB, PSP抗体に良好な反応を示し、特にMucin19抗体は加齢に伴い反応性の低下がみられました。また、顎下腺の漿液細胞はGRP抗体、顆粒管導管はEGF, NGF抗体、介在部導管はCSP1, SMGD, SMGD, SMGC抗体で良好な反応を示し、特にSMGC抗体は加齢に伴い顆粒管および介在部導管で反応性が低下し、SMGD抗体は加齢に伴い介在部導管と漿液細胞で良好な反応を示しました。さらに、老齢化に伴い出現する蛋白質の発現時期を検討する目的で行った生後6ヶ月の顎下腺と舌下腺の電気泳動の結果では、分子量45,000、29,000、14,300付近で両腺共通の発現を呈しましたが、顎下腺では分子量20,100、舌下腺では分子量45,000から66,400の間に特異的な発現を認めました。今後は、これらの結果をもとに老齢化に伴い出現する蛋白質の時期による違いや部位について詳細な比較検討を行う予定です。
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