【研究の意義】我々は従来の歯科用エアータービンなど回転切削器具による支台歯形成による歯肉組織に与える大きな損傷を防止するのを目的として超音波による支台歯形成後の歯周組織の微小循環を検索するために形態学的手法と生理学的手法を用いた。形態学的手法として主に血管鋳型標本の観察をおこなった。実験動物の総頚動脈よりアクリル系合成樹脂を注入し、軟組織が完全に溶解させた後、走査型電子顕微鏡にて観察した。また、生理学的手法として歯肉の血流をレーザードップラーフローメーターにて測定した。 【方法】すべての実験は神奈川歯科大学動物倫理委員会による実験指針のもとに行った。ペントバルビツール系麻酔薬による全身麻酔下で、体重10Kg前後で歯周組織が臨床的に健康なビーグル犬を用いた。通常の歯科用エアータービンにダイヤモンドバーを装着し支台形成し対照群とした。実験群として超音波チップと歯科用スケーラーを組みあわせて支台歯形成を行なった。正常および支台歯形成時の歯肉微小循環を生理学的に観察するために、レーザードップラーフローメーターにて同様の実験系にて血流量ならびに血流速度の測定を行った。 【実験の具体的内容】現在までの観察結果では、超音波による切削は出血も少なく再生後の血管は正常とほぼ同様の形態をしていた。通常の歯科用タービンによる切削は歯肉へのダメージが大きく、血管は炎症時同様に拡張しその血流量も増大すし、再生までに時間がかかることがわかった。得られた形態学的データと生理学的データの比較検討を行うことにしている。また、これらの結果を総括し学会発表、論文(現在執筆中)として研究成果を発表する予定である。
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