研究概要 |
幹細胞は長期にわたり分裂しない静止期の細胞であると考えられており、bromodeoxyuridine (BrdU)投与後に、その長期保持細胞(LRC)として検出が可能である。このことを応用して、幹細胞の濃縮した分画としてマウス顎下腺から採取したSP細胞が、実際に唾液腺幹細胞を多数含んでいるか否かを明らかにするため、SP細胞中のLRCの割合を明らかにした。すなわち、生後3日齢のC57BL/6マウスの皮下に3日間連続、1日朝、晩2回50μg/gのBrdUを投与する。投与10週後に採取した顎下腺組織をcollagenase (Type I,750units/ml)とhyarulonidase (Type IV,500units/ml)で37℃,40分間消化後100mmのメッシュを通した後、0.05%のTrypsinにより消化、分散後、37℃,1.5時間ヘキストにて染色した。Flow cytometryによりヘキスト陰性分画として採取されたSP細胞の割合は約0.5%で、同分画はBcrplのinhibitorであるreserpineにより消失することが確認された。次に、採取したSP細胞のサイトスピン標本を作製し、メタノール固定後、2NHC1処理によりDNAを変性させ、抗BrdU抗体により免疫組織化学的にBrdU陽性細胞を検出した。標本をヘマトキシリンにて核染後、1000細胞中のBrdU陽性細胞の割合を算出した結果、SP細胞で約5%、non-SP細胞で約3%と殆ど差は認められなかった。従って、SP細胞分画に存在するLRCは少数で、組織幹細胞が濃縮されている可能性は低いと考えられた。
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