研究概要 |
本研究は,硬組織形成に関わる組織幹細胞を維持する微小環境を解明することで,顎顔面の再生医療への応用を探求するものである.平成21年度は歯根膜幹細胞の微小環境に関わる因子を探索した.幹細胞には,組織幹細胞が豊富に存在すると考えられているSide Population(SP)細胞を対象とした.Fluorescence activated cell sortingシステムにより単離したSP細胞とnon-SP(NSP)細胞の持つ遺伝子をマイクロアレイにより網羅的に解析した結果,トランスポーターであるMDR-1に加え,BMP2やFGFR4の強い発現がSP細胞に認められた.一方,NSP細胞においては,FGF9やSOX10などの因子がSP細胞よりも強く発現していることが明らかになった.これらの遺伝子発現は,RT-PCRにおいても確認された.NSP細胞でFGF9が発現し,SP細胞でFGFR4が発現したという所見は,SP細胞とNSP細胞の相互関係を推測させるものであった.また,SP細胞でBMP2が高く発現したことは,歯根膜幹細胞が骨芽細胞へ分化しやすい状況にあることを示唆している.このことは,昨年度に報告した培養および動物実験で,SP細胞がNSP細胞よりも高い硬組織形成能を有しているという結果を裏付けた. 以上より,1.歯根膜SP細胞は,NSP細胞から調節を受けている.2.歯根膜幹細胞は,硬組織再生に適した細胞である可能性が示された.
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