研究概要 |
多くの蛋白質は翻訳後修飾を受けて多様化すると言われている。翻訳後修飾で最も多いのは糖鎖修飾で、その意義として、付着への関与、蛋白質分解からの保護、抗原の変異性の付与や免疫機能からの回避などが挙げられる。ところが、歯周病関連細菌においては、糖蛋白質はほとんど研究されていない。本研究では、歯周病関連細菌のうちPorphyromonas gingivalisの表層蛋白質の糖鎖修飾に注目し、病原性との関連性を明らかにしたいと考えている。 まず、P. gingiualisの外膜画分を調製し、糖蛋白質染色を行ったところ、約50kDaのバンドが強く染色された。このバンドが主要外膜蛋白質RagBと同定できたため、同蛋白質を電気泳動により精製した。次いで、RagBを修飾している糖鎖の特異性をレクチン染色により検討した結果、RagBはConA、 WGA、 LCAおよびPHA-E4と反応したことから、マンノースやN-アセチルグルコサミンなどを含む糖鎖が結合していると考えられた。 また,主要外膜蛋白質RagBはレセプター蛋白質RagAとともに、発育増殖に必須な成分を能動輸送により菌体内に取り込むと考えられている.そこで、内膜から外膜レセプターヘエネルギーを伝達するTonBに注目し,RagABとの関連性を調べた。免疫沈降法により、TonBとRagABの分子間相互作用が明らかになった。TonB変異株ではRagABの発現量が減少していた。以上から、TonBはRagABとの相互作用によりエネルギーを伝達し、RagABの発現調節にも関与している可能性が示唆された. 現在、P. gingivalisの菌体成分を二次元電気泳動によって展開し,網羅的な糖修飾蛋白質スポットの検出と同定を試みている。
|