研究概要 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)が種々の前癌ならびに癌病変に検出されることから,HPV感染と発癌との関連が多くの注目を集めている.我々はすでに,短期間にハムスターの口腔粘膜にハムスターパピローマウイルス(HOPV)関連扁平上皮癌を誘発できる実験系を確立している.この実験系より,DNAワクチンが癌抑制に有用であることが示唆された.現在のDNAワクチンにおける問題点は,いかにして標的細胞である抗原提示細胞にDNAワクチンを導入して,効率良く遺伝子発現を行うことができるかである.そこで今年度では,20,21年度の実験結果をふまえて,ヒトパピローマウイルス関連癌由来の細胞(CaSki)におけるDNAワクチンの最適なデリバリーシステムの解析を行った.HPVのゲノムの主要遺伝子(L1)を用いて,naked pDNAによるDNAワクチンを作製し,このDNAワクチンをPLGAナノスフェアーに封入し表面に正電荷を持たせた.実験動物(BALB/ cAJcl-nu/nu)を,免疫群と非免疫群にわけ,免疫群には2回のDNAワクチン接種を3週の間をおいて行い,その後,CaSkiをマウスに背部皮下に移植した.DNAワクチンの投与方法として大腿四頭筋への投与を行った.また,DNAワクチン投与時にin vivo低電圧電気穿孔法を同時に行った. この結果,PLGAナノスフェアーをキャリアーとして用い,さらにin vivo低電圧電気穿孔法を行うとその癌抑制効果が高まることが判明した.このことより,より低電圧のin vivo低電圧電気穿孔法が安全性が高く癌化抑制に良好なことが示唆され,また,PLGAナノスフェアーをキャリアーとして用いることはHPV関連の口腔粘膜疾患の予防と治療における最適なデリバリーシステムとして有用であると考えられた.
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